配当収入が社会保険料の賦課ベースに追加されるかもしれない話

2023/12/10

FIRE 政治

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今、政府でFIREにとって非常にインパクトのある検討が行われています。

現在は社会保険料の算定対象としないことができる配当収入について、公平性の観点から社会保険料の賦課ベースに追加することを検討すべき、とされているのです。

今後の参考のため、配当収入が社会保険料の賦課ベースに追加される検討状況を時系列にまとめます。
2023年12月現在は検討段階で決定はしていません。

社会保険料(医療保険)に金融資産を反映させることの議論は20年以上に渡って行われてきましたが、まだ実現していません。
金融所得についてはここ2年くらいの動きです。

一方、介護保険については保険料への加味はないものの、2015年に給付段階で資産を加味する形に改正されています。

配当収入の社会保険料の賦課ベースへの追加は、すぐに実現することはないかもしれませんが、注視していきます。

新たな動きがあれば更新します。
ニッセイ基礎研究所のレポート「社会保障制度における応能負担と、金融資産把握について考える-その意義と課題の整理」によれば金融資産の把握による応能負担の議論は2002年7月の厚生労働省「社会保障負担等の在り方に関する研究会」に言及があり、少なくとも20年以上にわたって行われてきました。

2015年6月30日閣議決定した、安倍政権の「経済財政運営と改革の基本方針2015 ~経済再生なくして財政健全化なし~」(骨太方針2015)でも「負担能力に応じた公平な負担、給付の適正化」の項で以下の言及があります。
医療保険、介護保険ともに、マイナンバーを活用すること等により、金融資産等の保有状況を考慮に入れた負担を求める仕組みについて、実施上の課題を整理しつつ、検討する。 

その後、経済財政諮問会議の改革工程表の中で毎年言及され続けています。

安倍政権~菅政権~岸田政権と政権が変わってもここは変わりません。

経済・財政再生アクション・プログラム(2015年12月24日、安倍政権)

現役被用者の報酬水準に応じた保険料負担の公平を図るための社会保障改革プログラム法13における検討事項である介護納付金の総報酬割導入や医療保険において金融資産等の保有状況を考慮に入れた負担を求める仕組みについて、関係審議会等において検討し、2016年末までに結論を得て、その結果に基づいて必要な措置を講ずる(法改正を要するものに係る2017年通常国会への法案提出を含む)。

経済・財政再生アクション・プログラム2016(2016年12月21日、安倍政権)

経済・財政再生計画 改革工程表2017改定版(2017年12月21日、安倍政権)

マイナンバーの導入等の正確な金融資産の把握に向けた取組を踏まえつつ、引き続き、医療保険制度における負担への反映方法について、関係審議会等において検討し、その結果に基づき必要な措置を講ずる。 

新経済・財政再生計画 改革工程表2018(2018年12月20日、安倍政権)

高齢者医療制度について、マイナンバーの導入等の金融資産の把握に向けた取組を踏まえつつ、医療保険・介護保険制度における負担への金融資産等の保有状況の反映の在り方について、早期に改革が具体化されるよう関係審議会等において検討。

新経済・財政再生計画 改革工程表2019(2019年12月18日、安倍政権)

マイナンバーの導入等の金融資産の把握に向けた取組を踏まえつつ、医療保険・介護保険制度における負担への金融資産等の保有状況の反映の在り方について、骨太の方針2020に向けて関係審議会等において検討。

新経済・財政再生計画 改革工程表2020(2020年12月18日、菅政権)

マイナンバーの導入等の金融資産の把握に向けた取組を踏まえつつ、医療保険における負担への金融資産等の保有状況の反映の在り方について、2020年の関係審議会のとりまとめを踏まえ検討課題の整理を行うなど関係審議会等において、預金口座へのマイナンバー付番の状況を見つつ、引き続き検討。
※細かいことですが、2020年の菅政権になってからファイル名についている日付が和暦から西暦に変わっています。グッジョブ。

新経済・財政再生計画 改革工程表2021(2021年12月23日、岸田政権)

新経済・財政再生計画 改革工程表2022(2022年12月22日、岸田政権)

マイナンバーの導入等の金融資産の把握に向けた取組を踏まえつつ、医療保険における負担への金融資産等の保有状況の反映の在り方について、2020年の関係審議会のとりまとめを踏まえ検討課題の整理を行うなど関係審議会等において、預金口座へのマイナンバー付番の状況を見つつ、引き続き検討。《厚生労働省》

このあたりまで、金融資産に関する言及はあっても、金融所得(配当収入)への言及はありませんでした。

厚生労働省の第109回社会保障審議会医療保険部会(2017年11月24日)でも金融資産の考慮についてでさえ、慎重論が多かったです。
風向きが変わったのは2021年。

2021年4月23日 衆議院厚生労働委員会で以下の審議が行われました。

第159回社会保障審議会医療保険部会(2022年12月1日)の資料より

質問をした青山雅幸委員は立憲民主党から当選したものの、当選直後にセクハラ疑惑を受けて無期限党員資格停止処分となった人物で、質問当時は日本維新の会の会派に所属していたようです。(立憲民主の青山雅幸氏が離党届 セクハラ疑惑で党員資格停止中(産経新聞))
2021年の選挙では日本維新の会から出馬したものの落選、2022年の参院選では自身が設立した自由共和党の代表として出馬し、やはり落選しています。

で、その第159回社会保障審議会医療保険部会では金融資産に関する議論に加え、上記の金融所得についても言及されるようになりました。


歴史にifはないですが、青山氏が無期限党員資格停止処分を受けたときに、議員辞職していれば、数年は議論が遅れていたかも……
あるいは「1億円の壁」(2022年10月~)が騒がれる頃には同様の指摘がなされそうな気がするので、いずれにせよ時間の問題だったかもしれません。

2023年11月

財務省の財政制度分科会(2023年11月1日開催)の資料で改革の方向性として以下のように言及されました。
現在保険料の賦課対象とされていない金融所得のうち、本人の選択によって保険料の賦課対象となるかどうかが変わり得るもの(上場株式の配当など(※)。預貯金の利子などは含まれない。)については、公平性の観点から、保険料の賦課ベースに追加し、負担能力の判定においても活用する仕組みについて検討すべき。

11月20日 財務省の財政制度等審議会の「令和6年度予算の編成等に関する建議」でも金融所得への言及が見られます。
後期高齢者等の保険料は税制における課税所得をベースに賦課する仕組みとなっているが、税制において源泉徴収のみで完結する金融所得に関しては、確定申告がされない場合、課税はされるが保険料の賦課対象となっていない。そのため、上場株式の配当などの納税者が確定申告の有無を選択できる金融所得については、本人の選択によって保険料が賦課されるかどうかが変わるという不公平が生じている。 このため、公平性の観点から、上場株式の配当などの確定申告の有無を選択できる金融所得(預貯金の利子等は含まれない。)については、確定申告されない場合でも保険料の賦課対象とし、負担能力の判定においても活用する仕組みについて検討すべきである。その際、NISA等の非課税所得は、保険料においても賦課対象としないことを前提とする必要がある。

11月22日 経済同友会の「こども・子育て政策の財源に関する意見―現役世代の可処分所得の増加を図るため、まずは徹底した歳出改革を―」で以下のように言及されます。ここでも金融資産だけでなく、金融所得への言及が入りました。
社会保障制度を真に持続可能なものとするためには、中長期的な安定財源として、金融所得・金融資産も含む負担能力に応じて、全ての世代で、公平に支え合う税の組み合わせについても検討すべきである。 

2023年12月

令和5年第16回経済財政諮問会議(2023年12月5日)

全世代型社会保障構築を目指す改革の道筋(改革工程)について(素案)に以下の記載がありました。
国民健康保険制度、後期高齢者医療制度、介護保険制度における負担への金融所得の反映の在り方について、税制における確定申告の有無による保険料負担の不公平な取扱いを是正するため、どのように金融所得の情報を把握するかなどの課題も踏まえつつ、検討を行う。

↓は資料からの抜粋です。


これを受けて、日経新聞が記事化しています。
高齢者の社会保障負担、金融資産を加味検討 政府改革案(日本経済新聞)
タイトルでは「金融資産の加味検討」とされていますが、記事本文の冒頭では金融所得についても盛り込まれたことを報じています。

ところで、日経新聞は単に「社会保障改革の工程の素案」とか書かずに、いつの何の会議の資料か具体的に言及してほしいです。
原典を探すのが面倒なので。。

To be continued.

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プロフィール

ばしこ

2000年 15歳で株式投資を開始
2009年 米国株投資を開始
2011年 不動産投資を開始
2016年 長男(0歳)インデックス投資@ジュニアNISAを開始
2018年 妻(3x歳)インデックス投資@つみたてNISAを開始
2019年 長女(0歳)インデックス投資@ジュニアNISAを開始

mail:basico@hexarys.net

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